secret name ~猫と私~
少し冷めてしまった缶コーヒーを手にすれば、彼女が待っていてくれた事を知る。

「私、謝られるようなこと、されてないわよ?」

釈然としない気持ちをセッテに伝えれば、「あー・・・」と、困ったように眉を下げた。

「まぁ、くれたもんやから、もらっとき。」

「・・・分かった。」

セッテも、佳乃の釈然としない気持ちに気づいたようだ。

「マンション着いたら、話すわ。」

煮え切らない態度は、何だろう。

手の中の缶コーヒーを弄びながら、佳乃はノーヴェが去って行った方を、しばらく見つめていた。

セッテが話してくれるというのなら、待とう。
そう思うと、俄然早く帰りたくなってくる。
佳乃は答えの出ない事が嫌いだ。
白黒はっきりつけたいと思うし、モヤモヤしているのは性に合わない。

自然と早歩きになりながら駅へと向かい、いつも通り地下鉄に乗る。
時間が久しぶりに遅めなので、満員では無かった。

あと何回、2人で乗れるのだろう。
考え始めたらきりが無いので、すぐにやめた。
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