secret name ~猫と私~
社長は柔らかい笑顔のまま長い足を組み、セッテを指差しながら佳乃を見つめる。

「彼は、使えるか?」

ほんとうに何でもない事のように、本人の前で“猫”扱いをする社長に、内心腹が立った。
それをなんとか押し殺して、出来るだけ事務的な言葉を選ぶ。

「彼の仕事ぶりには、大変助けられております。」

「そう。それは良かったよ。」

ちらりとセッテを盗み見れば、姿勢良くたったまま嬉しそうに社長を見ていた。

何故、彼はペットのように扱われても、腹が立たないのだろう。
そんな態度に、佳乃の方が苛立ちを募らせてしまう。

「あの、社長・・・彼は・・・」

「あと1ヵ月だね。」

佳乃の気持ちなど全く知らずに、容赦なく期間の話をされた。

「そうですねぇ。俺も、高村さんのようなご主人に出会えて、良かったですわ。」

ニコニコと話す、2人の神経を疑う。
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