secret name ~猫と私~
猫からのおくりもの
新年。

里帰りから帰ってきた佳乃は、疲れていた。
久々に同窓会に参加するために、今回は実家に長く帰っていたのだが、それがいけなかったのかもしれない。

母親には知人の息子という男性と無理矢理お見合いをさせられ、同級生には男友達とやらを紹介され、弟の4才になる子供の子守りをさせられ。

何が何だかわからないまま、東京へ戻る日になったのだ。
個々で振り返れば楽しい年末年始だったが、全部まとめると本当に慌ただしかった。

「ただいま・・・」

おかえり、と返事のない静かな部屋だが、今は幸せだ。
実家では家事をしなくてもいい分楽かもしれないが、いつしか落ち着ける場所ではなくなっていた。
全ては孫中心の実家には、居場所がなくなりつつある。
そのくせ『里帰りしろ』と言うのだから、母は横暴だ。
甥が可愛いとは思うものの、幼い子供の扱いはよく分からない。
滑舌があまりよくないらしく舌足らずだが、『よっちゃん』と呼んでくれて、なついてくれたのは純粋に嬉しかった。

テーブルに郵便物を置いて、ルームウェアに着替える。
仕事帰りと違ってスーツではないが、帰ったら着替えるというのが習慣になってしまっていた。

郵便ポストには、新年とあって年賀状が溜まっていた。
仕事関係の付き合いもあり、年賀状は書くのも届くのも、多い方だと思う。


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