secret name ~猫と私~
これが“仕事以上の働きを求めないでください”と、言う事か。
彼の仕事はあくまでも“佳乃のサポート”であって、会社の人間と仲良くなる事は含まれていない。
彼自身もそれを求めていないようだ。

「そんなんじゃ職場で友達も出来ないわよ?」

「それ、必要なん?俺ら猫は、契約期間終了したら、あっさりおらんくなるやん。」

「それは、そうだけど・・・。さ派遣先での友達でも、連絡取り合ったり、飲みに行ったり・・・」

「ないなぁ。」

肩をすくめ、首を横に振る。
無いとあっさり言っているセッテに、佳乃の方が寂しさを覚えた。
ただの強がりではなさそうな、曇りのない眼で言うから、本当にそう考えているのだろう。

「無いって・・・友達、居ないわけ?」

こんなに社交的で、人に囲まれているのが似合う人が。

「そら、ちゃんとおるよ。せやけど、派遣先の仕事場で友達作っても意味無いしな。」

笑って、なんでも無い事のように言うが、職場の同僚や友人がいるからこそ、支えあったりして頑張れる時があるのではないかと思う。
< 32 / 259 >

この作品をシェア

pagetop