secret name ~猫と私~
だから早く仕事に戻らせてほしいのだが、社長はゆったりとした人なので、きっとそれはかなわない。

「高村君、最近疲れているようだから。」

社員の事をよく見ている彼は、時々そうやって呼び出してはねぎらいをかけてくれる。

しかし、今はそれどころではない。

「大丈夫です。今は、控えている新作発表会に全力を尽くしたいと思います。」

「それは嬉しい言葉なんだけどね。」

困ったように笑いながら、社長は佳乃を見つめる。
優しく、まるで妹を心配するような眼差しで。

「ちょっと、私生活乱れてないかな?」

顔色が悪いのだろうか。
それとも、少し痩せたのを、見抜かれたのか。
ついでに肌も髪も、乾燥でダメージを受けている。

この社長は、そういうところが意外と鋭いから困ると、内心焦った。

「仕事に支障はないつもりですが・・・」

それを隠してやや投げやりに答えれば、溜め息が返ってきた。
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