背中を合わせて【完】
拭くものがないから、しょうがなく濡れた手と足首をはらって水気を落とす。


そのまま足を引きずりながらベンチに戻った。


さっき男が座っていたベンチの下に転がっている1つの缶。


それは朝未夜が公園に来る途中で買ったカフェオレの缶だった。


拾い上げてみると、一口しか飲んでいなかったはずの缶がとても軽い。


缶が倒れたときにこぼれてたのかと思って缶の転がっていた土の上を見たけれど、カフェオレが染みて湿った土の跡は小さかった。


缶の中から物がコロンと移動する感覚が手に伝わる。


覗いてみるとタバコの吸い殻が入っていた。


きっとあいつが吸ったタバコだろうと軽く思って缶を置き直す。


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