とある神官の話



 それは騙されてるんですよ!


 確かにイケメンなのだろうし、総称すれば"いい男"なのだろう。認める。だがあれだ。神出鬼没のストーカー予備軍なのはどうかと。

 何故彼が私にくっつくのか。一目惚れ云々言っていたが嘘っぽい。……私から見てもゼノンならば他にもいるのに。私はあんなイケメンが私に惚れるだなんて有り得ないと考えていた。有り得ない。
 突っ伏したままの私に「私も若かったらねえ」とブエナが漏らす。



「シエナもさ、恋人の一人や二人作らないと」

「恋人は一人じゃ……」

「私が若い時はいろいろとあっただけどね」

「え、気になる」




 肝っ玉母さん、というようなブエナの恋愛話だなんて。あまり聞いたことがない。照れた顔をしたブエナが可愛く見えた。
 私にココアを私に入れてくれて、私は受け取る。ブエナが向かいに座った。

 ブエナは元神官だ。その頃の写真を見たことがあるが、美人だった。勝ち気そうな溌剌とした感じの女の子という感じだった。薔薇の花束を貰った話や、求婚話など聞いていてドキドキしてしまう。
 同世代の恋愛話にはほぼ参加しない(むしろ出来ない)のだが、興味がないわけではないのだ「モテモテだったんだ」




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