とある神官の話
「余計なマネをしたな!ヤヒア!」
「別にいいじゃん。感謝して欲しいくらいだよ」
私が破壊したはずの右腕は灰色の義腕のようなものとし、そこに立つ妖艶な美女―――リリエフがいた。そしてすぐ側に赤い髪を靡かせたヤヒア。
指名手配犯が、二人。
体がふるえそうになる。
密かにラッセルやアゼル達へ向けて、連絡用の術を発動させる。まずい。内部に侵入していたなら、他にもいるのではないか。
「彼女、"似ている"んじゃないの?だから君、むきになってる」
「っ」
「うわ、図星?」
「黙れ」
リリエフが槍を放つ。だがヤヒアは体を捻って回避。うわ怖い、と笑う。
別の街頭の上に器用に着地し、振り向く。私と目が合った「――――じゃあ」
頑張って。
そう声だけを残し、煙のように消えた男。消えたならしかたない。私はリリエフへ向き合う。彼女の妖艶さは消えずに、ただ怒りだけがそこにある。
宮殿にはやはり入れなかったか。背後には宮殿があり、距離は少々ある。敷地内であろう。
出来る。大丈夫。私なら、きっと。