とある神官の話




 彼女は妊娠し、子供を身篭った。待望の子供であったらしい。だが、その子供は死産だった。生まれてくるなと言われんばかりに。
 夫は亡く、頼る支えもないダナ・フィルタは自宅や職場から姿を消した。そして、闇術に手を染めているという。それは少し前に指名手配となったのだ。







「子供の一部分を持ち去っていくだなんてなあ……」





 苦い顔したロマノフは思い出しているのだろう。

 被害に遭った子供の死体は、どの子供も何かしらの部分が無くなっていた。それは足だったり腕だったり、様々だ。

 そう。ちょうど被害に遭った子供の死体の無くなった部分を合わせると、一人の人間の体になるような……。






 きっと彼女は悲しむ。



 思い出すのは、子供たちと遊ぶ姿。自分にもあれだけの笑顔をむけられたら、堪らないだろうなとゼノンは思う。だからこそ、早く解決したかった。







「そして会議があるそうで、行って下さい」

「それを先に言えよお前」






 溜息まじりにそう言ったロマノフは「面倒だな」と漏らす。
 確かに面倒と厄介事ばかりで嫌になりますね、とゼノンも頷いた。






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