とある神官の話





 その日。

 夜道を歩いていた若者は、足早に進んでいた。
 予定よりも遅くまで付き合わされたのである。彼女がいる身で……。年上に誘われたら従うしかない。そんな雰囲気だったのだ。

 最近、奇妙なことが囁かれていることで、早く帰らなければと若者は焦る気持ちのまま進んでいく。

 そこで――――。






「化け物だなんて君達は言うが」

「ひっ」





 地面に転がっているのは、人。地面が光沢を帯びてみえるのは――血か?

 短い悲鳴をあげながら、若者は腰が抜けた。そのまま後ろへと下がっていく。逃げなければ。しかし立ち上がれない。若者は後ずさる。




 それは、見えた。







「君達こそ化け物ではないのか?」







 目の前にいたそれが、若者のすぐ傍にいた。耳元。耳元で囁かれた声に、若者は凍りついた。低い声。

 若者は意識を失った。





  * * *



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