猫が好き!


 家にたどり着くと、庭付き一戸建ての大きな二階屋を見上げて、シンヤは呆然とつぶやいた。


「ここに一人で住んでるの? 真純さんって社長令嬢かなんか?」
「それは私の友達。ここはその子の家なの」


 真純の友人、辺奈瑞希は、辺奈商事の会長の娘だ。
 元々この家に住んでいたが、仕事が忙しくなり、会社からは少し距離のあるこの家に帰るのが億劫になったらしい。

 そして、ついには会社の近くにマンションを買って、住むようになったのだ。
 人が住まないと家が傷むからという理由で、真純が管理がてら格安で住まわせてもらっている。

 門を開け玄関を入ると、シンヤを中に促す。
 靴を脱いで廊下を抜け、リビングにやってきたシンヤは、部屋を眺めながら改めて感嘆の声を漏らした。


「広っ……」
「まぁ、一人で住むには無駄に広いから、掃除が大変なんだけどね」

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