猫が好き!


 翌日、真純は宣言通り、一人で辺奈商事に向かった。

 本社ビルの前で社員証を首にかけ、七階にある情報システム部を目指す。

 ショールームや多目的ホール、総合受付のある一階と、エスカレータで外から直行できる二階のカフェは一般人も出入り自由だが、それ以外の場所では社員証のない者は、守衛に呼び止められるのだ。

 変則的な勤務をしているものの、真純も一応社員だった。

 情報システム部の扉を入ると、入口は狭い空間になっている。
 一歩入ったところにカウンターが設けられ、受付のプレートと呼び鈴が置いてあるだけで、人はいない。

 右手には扉を開け放たれた応接室があり、左手と正面に静脈認証装置の備えられた扉がある。

 つまり、静脈を登録した者しか、この先へは入れないのだ。

 真純も以前は登録してあったが、今は在宅勤務なので情報が抹消されている。

 カウンターの呼び鈴を押すと、少しして正面の扉から、庶務の女性が現れた。
 真純の用件を聞いて、扉の奥へ姿を消す。
 ほどなく瑞希がやって来た。

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