海の花は雪
「…でも先生、本の文字が消えてしまったのは、どうするんですか?」

僕は反省しつつ質問すると、深谷少年の眉間のしわが深くなった。

何か、じゅんぐりに落ち込んでいるな〜僕と深谷少年…

「それも問題ありません。文字が消えた本の復活は、王印と図書館長印があれば、すぐにでも…」

「先生、その王印とかって、どこにあるんですか?誰でも使えるんですか?」

僕は問題点を指摘した。

「確か、私がプログラムした内容ですと…図書館長印は、私にも使えますが、王印は本人でないとダメでしたね〜」

ほほほほ…と、戸川先生は可愛いらしく笑った。

「ダメじゃん、修子ちゃん…陛下って、フィルでしょ?そんな王様の生まれ変わりの人を探していたら、深谷君の人生が終わっちゃ…」

と、ハル君は言いかけて、口をつぐんだ。

何気に、残酷な事実を宣告しているよね、ハル君って…

「…実は一つ、気になっている事があるんですけど…」

ヘコんでいるとばかり思っていた深谷少年が、背筋を伸ばして言うと、ハル君を見た。
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