甘いケーキは恋の罠



「では、そろそろ行きましょう?」


コーヒーを飲み終えた私達は軽く未来さんに挨拶をしてから店をあとにした。


街路樹が色づく遊歩道を歩いていると、匠さんがあるビルの前で足を止め、そのビルの地下へと続く階段を降りて行く。


着いた先はキッチンスタジオのような所で、大きなアイランドキッチンが1つと大きな業務用の冷蔵庫があった。


「あの…ここは…?」


恐る恐る匠さんに問い掛ける。


「あぁ。ケーキを作る為に借りている場所です。」


着ていたジャケットを脱ぎ、腕まくりをしながら匠さんは応えた。


ケーキを作る為にビルの1角を借りるなどパティシエはお金持ちなのだろうか。


全くそちらの世界を知らない私にはこの感覚がよく分からなかった。



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