【完】Rose.
喜んでいないわけじゃない。
本当は喜びたい。
けれど、すぐさま次へと向かわなければいけない。
いつもそう思ってる。
そうでなければ、また、
『あんたなんか、いらない』
そう言われるのが、怖いから。
利用価値が無くなって、いらないと言われたら、私はどこに行けばいい?
だから、走り続けるの。
評価されて喜べば、遅れを取る。
その間にも状況は変わって行って、私なんて忘れ去られてしまう。
「…なにかに、いつも追い掛けられてる。貴女を見ていてずっと思っていたことです。…もう十分頑張っているのに、評価されているのに、まだまだだと言うかのように、走り続ける」
『貴女ってなんだか、痛々しいのよね』
いつだったか、寿退社して行った、お局の先輩に最後に言われた言葉を思い出した。
「…だって、だってそうしないと、」
また、捨てられる。
「価値が、無い?」
そう、価値が無くなれば、すぐにさようならだ。
「…誰かが、そんなことを言いましたか?」
…言われたのは、幼い頃。
「…いえ。でも、」
きっと、大人になった今でも、変わらない。