【完】Rose.
「…ずっと、学生時代に声をかけられなかった事を悔やんでました。意気地が無いってね。…だから、新入社員に貴女がいるとわかった時は、…もう頑張るしかないって、覚悟を決めたんです」
…私のために覚悟なんて、決めないでよ。
「…でも、私が入社してからも、5年経って…」
「…あぁ、それはね、覚悟はあっても力は無かったものですから。…貴女を引き寄せるためには時間が必要だった。…誰にも文句を言わせない、貴女に見合う男になるために」
私に見合うだなんて、
「…そんなの、私の方が見合わない…」
「いいえ。そこが自覚の無いところですよ。…社内でもやっぱり貴女の評判は高かったから、私がアメリカから戻って来た時には、貴女はもう課長職に就いていた」
「…それは、たまたま…」
大学時代のように、あたり構わず暴走した結果だし。今の私ならば引き受けなかったかもしれない。
「…貴女はずっと評価され続けていました。それは今もです。けれど、嬉しそうに喜んだところを、私は見たことがありません」
「………」
キュっと唇を噛み締める。