野獣な執事とワンコお嬢様
俺は琴音をあっさり奪われたダメ執事。



琴音を任せられない。



そう言いたいんだ。



「必死になるかと思えば、なにも言い返してこない。つまらないよ、ヒョウ」

「申し訳ありません、事実に言い訳をするほど、プライドは低くありませんので」

「変わらないな、お前は」

「龍馬様も、お元気そうでなによりです」



この人は俺の上に居続ける人だと、そう教えられて生きてきた。



いろいろな面で尊敬してるし、感謝もしてる。



自分に与えてくれたものは、十分すぎるほどだったから。



「まさか琴音が土下座するとは思わなかったよ」

「それは…わたくしもそう思います…」

「ヒョウのためだ」

「はい…」

「お前は、ここまでする琴音を幸せにできる男か?」



そんなこと、今まで聞かれたことがなかった。



好きにしたらいい、とか、俺に琴音をやる、とか。



俺が琴音を幸せにできるかなんて、重要じゃないとも思っていたし。



その質問は何とも難しく、答えづらい。



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