家元の寵愛≪壱≫


「若奥様、こちらに……」

「……はい」


はあぁ、何とか指を切らずにカット出来たわ。


カットした林檎をお皿の上に乗せると、

お弟子さんがそれを手にして………。


「ご準備が整ったようでございます。それでは、新婦ゆの様。新郎のご両親へ差し上げて下さい」

「……はい?」


“差し上げて”ってどういう事?

思わず、隼斗さんに視線を向けると


「食べさせてあげればいいから」

「えっ?!」

「さぁ、こちらへどうぞ」


またもやお弟子さんの誘導でステージ中央へ。

お弟子さんにフォークを渡され、

私は仕方なく、それで林檎を刺し……。


「はーい、ゆのちゃん♪あーん……」

「……ッ/////」


お義母様は恥ずかしがる事無く、大きな口を。

あげる方が恥ずかしいって、どういう事?


お義母様に差し上げた後、お義父様にも。

2人とも嬉しそうに召し上がってくれた。


普通の人なら何てこと無い事でも私にとっては大仕事。

だけど、だからこそ、意味がある。


『結婚式』という人生の節目に

こうして、苦手な事を修練し克服した成果を見せられるだなんて。

きっとこれも全て、彼の心遣い。


――――本当にありがとう、隼斗さん。



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