家元の寵愛≪壱≫


意味深な言葉を耳元で囁いた彼。

私は思わず硬直してしまった。


だって、耳元に爆弾を投下するんだもん。

誰だって身構えちゃう筈だよ……。



「ゆののドレス姿、超可愛かったなぁ~」

「えっ?」

「そのままお持ち帰りしたかったのになぁ~」

「ッ?!////」


またもや爆弾投下。

彼はお酒でも飲んでるの?


ううん、お酒は飲んで無かった。

終始、お水を飲んでただけで……。


普通なら、新郎は友人に浴びるように飲まされるらしんだけど、

式場はホテルじゃないし、

帰りに運転する事が分かっていたから

彼は最初から飲まないつもりだったらしい。



そう考えると、彼の優しさがどこまでも果てしなく存在して

私は彼の愛情に溺れてしまう気がする。


ううん、既に溺れているのかもしれない。



ふと、脳裏に浮かぶ黒い影。

今なら彼に聞く勇気がある。


だって、彼は私に永遠の愛を誓ったのだから。



「あの、隼斗さん」

「ん?」


私は勇気を振り絞って尋ねる事にした。


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