家元の寵愛≪壱≫
「諸岡さんとはどういった関係ですか?」
「え?……諸岡さんって?」
「………」
「あっ、プランナーの?」
「………はい」
「どういうって、依頼人と請負人の関係だけど?」
「………ホントに?」
「………あぁ。ってか、何?……急に」
隼斗さんはごく普通に答えた。
特に怪しい感じはしなかったけど、
私の心は納得していない。
だから………。
「実は私、見たんです」
「見たって、何を?」
「………2人の密会を」
「はっ?!……密会って、何の?」
「それはこっちが聞きたいです」
「………ごめん、言ってる意味が全く分からない」
「………」
隼斗さんは路肩に車を止め、私をまっすぐに見つめた。
その瞳からは嘘を言っているようには思えない。
だけど………。
「ホテルから出て来た彼女をこの車に乗せたじゃないですか」
「へ?………………あっ!!」
隼斗さんは思い出したらしい。
私は忘れたくても忘れられなかった出来事を。