Dearest
アキは施設の子ども達の心を知った気がした。



普通の子どもと何も変わらないように見えるけど


孤独に怯え、でも甘えられる親がいないから我慢する事を覚えてしまっている子ども達。




小さい彼らには、置かれている現実があまりにも残酷すぎる。


きっとラヴが時折見せる寂しげな表情も、彼の心の中にある孤独のせいなんだろう…



アキはそう思った。





泣き止んだレオンを部屋へ連れて行ったアキは子ども達のいる居間へと向かった。


居間に行くと、茶髪のボサボサした頭の子どもが1人で絵本を読んでいた。



「サミュエル、1人で何してるの?」

「アキさん」



サミュエル=ミケーレというその子どもは、青い瞳をした可愛い顔立ちの9歳の男の子。


よく泣いているサミュエルをあやすラヴを見かけていたアキ。




サミュエルはアキがどことなくラヴに似ていると思っていた。


見た目とか性格ではなく波長が。




「アキさんは子どもが出来たら可愛がりますか?」



いきなりのサミュエルの質問にアキは目を丸くしたが、すぐ笑顔になって頷いた。



「もちろん。あたし子ども大好きだもの。サミュエルみたいな可愛い子を産みたいな」



サミュエルもアキがお母さんだったら幸せだったんだろうなと思った。


そしてラヴがお父さんだったら、もっと幸せになれるとも思った。



自分の母親のように子どもを捨ててしまえる女性もいれば、アキのように、子どもが好きな女性もいる。


前者から生まれた自分は運が悪かったのだろう。




サミュエルはアキを見つめながらそう思っていた。
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