Dearest
『ラヴ=エンドロール。20歳。流星のごとく現れた新人。彼の素性は全て謎のベールに包まれている。長身に整った顔立ちが女性人気に火をつけている』


と紹介されていた。



あの時から片時も忘れた事のない男。




「あの人、もっと柔らかな感じだったよな。この写真の顔、寂しそうな顔してるように見える。……やっぱり別人か」



アキはそう思うと雑誌から目を離した。





「もし本当に俳優さんだったら世界が違いすぎるよ…。どうか別人でありますように」


アキは願った。



しかしアキは、『世界』がどれだけ狭いかをこれから知る事になる。





バイトを終え家に帰ると、アキは荷物の整理をした。


母から勧められた『ホワイトガーデン』での就職。
アキはそれを快諾した。




イギリスに行くのはもう少し先だが、アキは早まる気持ちが抑えきれず荷造りを始めていたのだった。



「アキもあっちに行っちゃうのか。寂しくなるな」



アキが自室で荷造りをしていると、4つ年上の姉であるハルがドアの前に立っていた。



ハルは大学を卒業し、大手企業に就職したキャリアウーマン。

だが、家では家事などをこなす優しい姉である。




「お姉ちゃん」

「もう、アキがいないんじゃナツが就職するまで結婚できないじゃない。…なんて、相手がいないってね」



ハルとアキは笑う。

ナツとはアキの1つ年下の弟のこと。




「アキは寂しくないの?あっちにはお父さんもお母さんもおじいちゃん達もいるけど…。友達とかに会えなくなるし。アキは英語もろくに話せないから心配だよ」



ハルはアキの横に座る。
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