Fragile~思い出に変わるまで〜
一瞬……びっくりして、まじまじと桜井君の顔を見た。


差し出されたのは彼の名刺。



真剣にそう言ってくれてるのが、彼の態度でわかる。


精一杯の勇気を出して、私なんかのために……


「……ありがとう

じゃあ、もし何かあったらここに電話しますね?」


何だか彼の気持ちが嬉しくて、上司の妻という立場を忘れてそう言ってしまう。


もちろん、本当にかけるつもりはないけれど、彼の気持ちが嬉しかった。


さっきまで強張ってただろう自分の表情も自然と緩むのを感じる。


でも、当の本人はどうやら断られると思っていたらしい。


自分で言ったくせに、えっ?と驚いた顔をしてまじまじと私の顔を見返した。


それがほんとだとわかると、目を輝かせて興奮気味に答える。


「はい!この携帯番号に電話いただけたら、いつでもこの桜井が相談に乗りますから!」


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