Fragile~思い出に変わるまで〜
彼の声のボリュームに驚いて、それから可笑しくなってまた吹き出してしまった。


「ありがとう」


もう一度彼の優しさに感謝しながら礼を言う。


そして、やっぱり帰ろうと思って、ゆっくりソファーから立ち上がった。


何気なくロビーの外に目をやると、知った顔が見えた気がしてそこで目が止まる。


――あれ?健?


隣のビルにあるカフェから出てくるのはやはり健だ。


なんだ、お昼ご飯でも食べてたのかな?


そう思って彼のいるところまで歩いていこうとした時だった。


健の後から出てきた人物を見て息を呑む。


「――っ!」


――藤森さんだ!!


直感でそう思った。


会ったこともないのになぜかそう確信する。


優しくエスコートするような振る舞いも……


彼女に向けられた健の笑顔も……


それを裏付けてるような気がしたから。

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