Fragile~思い出に変わるまで〜
膝をついて彼女の顔を見ることしか出来ないでいる俺に、藤森はしがみついてきた。


俺の腰に両手を回して、顔を腹に埋める。


そして彼女は言ったんだ。


さとみの代わりでもかまわないと……


私の体が役に立つなら、それでもいいと……


『健の家庭が壊れてしまったのは私にも責任があるし、健が元気になってくれるなら……

さとみさんの代わりでもいいから、側にいさせて?』


女という生き物は、なんでこんなにも強くいられるんだろう?


さとみにしても、藤森にしても、俺という弱くて我が儘な人間をいつも優しく受け入れてくれる。

俺なら……


逆の立場で彼女達を広い心で受け入れることが出来るんだろうか?


そんなことを考えながら、目の前の卵焼きに箸をつける。


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