脱力系彼氏
ガサガサと1番上の引き出しを手荒く漁る。それを、あたしはキョトンと見つめながら、
「何、探してんの?」
けれども、あたしの質問には答えず、冴子は「あったあった」と言って、キャップのついた果物ナイフを取り出した。
「あたしが剥いてあげるよ!」
「冴子が? 剥けるの……?」
「あんた刺し殺すわよ?」
冴子にギロリ睨まれ、あたしは小さく首を横に振った。本当に、刺し殺されそうだ。
カツカツとローファーの固い足音を立てながら、冴子は、病室の隅にある水道の方へ歩いて行った。軽くリンゴと果物ナイフを洗い、それからすぐにあたしのベッドに戻って来る。
冴子は満足そうにあたしに笑いかけ、椅子に腰掛けると、急に真剣な顔をしてリンゴに刃を入れた。
冴子の真剣な顔は余りにも可笑しくて、あたしは笑いを堪えずにはいられなかった。冴子はそれに気づくと、手を止めてあたしを睨んだ。
「あ゛? 何っ?!」
「何も……無いっ」
失礼だと思って口を押さえたけれど、顔は真っ赤になるばかりで、肩は自然と震えてしまう。
「黙れ! 笑うなコノヤロー! 殴り飛ばされたい訳?!」
「ごめ……っ! だって冴子、超真剣で……っ! あはは……っ!」
冴子は今にも殴り飛ばしそうな顔であたしを睨み付け、不機嫌そうにまたリンゴと格闘を始めた。
「何、探してんの?」
けれども、あたしの質問には答えず、冴子は「あったあった」と言って、キャップのついた果物ナイフを取り出した。
「あたしが剥いてあげるよ!」
「冴子が? 剥けるの……?」
「あんた刺し殺すわよ?」
冴子にギロリ睨まれ、あたしは小さく首を横に振った。本当に、刺し殺されそうだ。
カツカツとローファーの固い足音を立てながら、冴子は、病室の隅にある水道の方へ歩いて行った。軽くリンゴと果物ナイフを洗い、それからすぐにあたしのベッドに戻って来る。
冴子は満足そうにあたしに笑いかけ、椅子に腰掛けると、急に真剣な顔をしてリンゴに刃を入れた。
冴子の真剣な顔は余りにも可笑しくて、あたしは笑いを堪えずにはいられなかった。冴子はそれに気づくと、手を止めてあたしを睨んだ。
「あ゛? 何っ?!」
「何も……無いっ」
失礼だと思って口を押さえたけれど、顔は真っ赤になるばかりで、肩は自然と震えてしまう。
「黙れ! 笑うなコノヤロー! 殴り飛ばされたい訳?!」
「ごめ……っ! だって冴子、超真剣で……っ! あはは……っ!」
冴子は今にも殴り飛ばしそうな顔であたしを睨み付け、不機嫌そうにまたリンゴと格闘を始めた。