脱力系彼氏
第6章 動き出す時間
騒がしい蝉の声。1週間しか生きられない命を、精一杯に生きているはずなのに、うるさくてイライラする。ギラつく太陽は歪んで見えるし、親戚のおばさんが持って来た花瓶の花も、濁った茶色にしか見えない。
「綾ちゃん、御飯はちゃんと食べないとダメだよ」
担当の看護士さんが困った顔で、あたしの食器を片付け始めた。聞こえているけど、返事をする気になれない。今日は、特に吐き気がする。
「昨日も一昨日も、全然食べてなかったじゃないの。身体に悪いよ」
だって、食欲がないんだもん。
それに、あたしの口には合わない。
ここ2日、冴子が剥いてくれたリンゴしか食べていない。
「随分、顔も痩せたんじゃないの? 食べないと、治るものも治らないよ?」
……うるさい。
心配してくれるのは嬉しいけど、もう、放っておいてほしい。
今日は、本当にひどい吐き気だ。
足の調子も、どこか悪い気がする。
「顔色、悪いよ?」
あたしは、ゆっくりとギプスで固まった足を動かした。重くて、力を入れても沈んでいく。やっぱり、栄養が足りていないのかな。
それでも足を引きずって、あたしはベッドから下りた。
「綾ちゃん、御飯はちゃんと食べないとダメだよ」
担当の看護士さんが困った顔で、あたしの食器を片付け始めた。聞こえているけど、返事をする気になれない。今日は、特に吐き気がする。
「昨日も一昨日も、全然食べてなかったじゃないの。身体に悪いよ」
だって、食欲がないんだもん。
それに、あたしの口には合わない。
ここ2日、冴子が剥いてくれたリンゴしか食べていない。
「随分、顔も痩せたんじゃないの? 食べないと、治るものも治らないよ?」
……うるさい。
心配してくれるのは嬉しいけど、もう、放っておいてほしい。
今日は、本当にひどい吐き気だ。
足の調子も、どこか悪い気がする。
「顔色、悪いよ?」
あたしは、ゆっくりとギプスで固まった足を動かした。重くて、力を入れても沈んでいく。やっぱり、栄養が足りていないのかな。
それでも足を引きずって、あたしはベッドから下りた。