ブラック王子に狙われて②
ちょっぴり薄暗い館内をゆっくりと廻る。
「慧くん、見て~!ジンベイザメだよっ」
燥ぐ絢に柔らかい笑みを向ける。
混雑してる館内ではぐれないように、
終始俺にべったりとくっついてる絢。
間近で嬉しそうに水槽を眺める彼女を見つめ、
旅行を計画して良かったなとつくづく思う。
大きな水槽を眺め、久しぶりに俺もテンションが上がる。
だって、絢が、水槽を見てたかと思えば
俺の隣りの見知らぬ女性を牽制して
ぎゅっと腕に抱きついて来たから。
可愛い嫉妬をしてくれてるみたい。
女子三人組の子たちの視線に気づき、
俺は王子スマイルで微笑むと、
絢がぷくっとフグみたいに頬を膨らませた。
「ふぐみたいだぞ」
「ハリセンボンって言ってよっ」
かっ、可愛い。
ふてくされるのも可愛すぎて、人目も憚らず抱き締めた。
いつもなら軽く拒否るみたいに抵抗するのに
隣りの女子三人組を気にしてるのか、抱き締め返して来た。
混雑してるってのも、意外といいかも。
絢のリアクションがいちいち可愛い。