死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん
「うわぁ!!すごいのだ!」
魔王が感嘆の声をあげる。
それはそうだろう。城から出て、町に来た私たちの前には、鮮やかに装飾された町並みと、大勢の人で溢れかえった屋台が。
私も、思わずあちこちをキョロキョロしてしまう。
「いっぱい、お店が出ているのだ!人間がこんなに集まっているのも、初めて見たぞ!」
きゃっきゃっ、とはしゃぐ魔王。こうして見ていると、人間の子どもと何ら変わりがない様に思える。
「おい!あれは、何なのだ!?」
魔王が指差す方に目を向けてみると、屋台の前にはたくさんの子どもが並んでいた。
「魔王様、あれは『わたあめ』というお菓子です。ふわふわとした、甘い食べ物です」
魔法使いが、丁寧に魔王に教えてあげている。それに魔王は、ふむふむと頷き、次第に目を輝かせていく。
「わらわ、あれが欲しいのだ!」
ぴょんぴょんと跳びはねながら、わたあめを指差す魔王。
「わかりました。それでは、僕が買って来ましょう。お2人は、こちらで待っていて下さい」
そう言って、魔法使いは走って、わたあめ屋の方に向かって行った。
「わたあめとやら、楽しみなのだ!」
魔法使いが買いに行く様子を、嬉しそうに眺めている魔王。かなり楽しみらしい。
そんな魔王の様子を私は眺めていた。
一体、何故この子が死神リストに載ってしまったのだろうか…。まだ天界から、何も連絡は来ないが、もしも。もしも、リストに載ったことが間違いではなかったら…?
私は、この子を斬れるだろうか…?
「キャーーーー」
ふと、そんなことを考えていた時、どこからか、悲鳴が聞こえてきた。と思ったら、すぐにドーーーンという激しい音も辺りに鳴り響いた。
「な、なに!??」
「何なのだ!」
魔王が、すぐ側に寄って来て、私のマントの裾をキュッと握り締める。