赤い月 参

守られている。

倒すべきオニに。

その上彼女は、人間の浅はかさの尻拭いまでしてくれるという。

オニのくせに。

人間なんて、餌でしかないんだろう?

もう、何を信じていいのかわからない…

炎の外側では、宙に浮いたうさぎが空に昇る水柱に身を投じていた。

彼女が目を閉じ両手を広げて黒光りする風を放つと、水中にバチバチと稲妻が走る。

すると、仄暗い霞が渦巻く水流から逃げ、池があった地面の窪みに沈澱し始めた。

『闇』を、龍の水から追い払っているのだろう。

力を引き離された『闇』が怨めしげにザワザワと揺れるが、うさぎを畏れてか、もう水に触れようとはしない。

清らかさを取り戻した水の竜巻は、元の持ち主である龍に還った。

後は、あの怒り狂う大量の『闇』を浄化すれば…

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