ブルーブラック【番外編】
「神野···椿です」
名を恥ずかしそうに名乗り、自己紹介したのが百合香の弟·椿《つばき》。
彼は自分の名が女性的なことにコンプレックスを感じている。
「椿くん?いい名前ね」
弥生がにっこりと椿に笑顔を向けてそう言うと、椿は照れたようにはにかんで俯いた。
その時に丁度料理と飲み物が運ばれてきて、テーブルが鮮やかに彩られた。
「では···何をいえばいいんだ」
「お父さんたら!智に任せなさいよ」
「···本日はお忙しいなかお集り頂きありがとうございます。私と百合香の結婚と同時に、両家の親睦を深める場にしたいと思っております。ゆっくりとお食事をお楽しみください。」
(よくスラスラと出てくるなぁ)
百合香が改めて智の挨拶に感心していると、グラスを鳴らす音が響いてやっと空気が和み始めた。