結婚白書Ⅰ 【違反切符】


実家は空港から車で40分ほどのところにある。

いつもなら親父が迎えに来るのに どうしたことか 今日はお袋が来ていた。

運転なら俺の方が上手い お袋を助手席に乗せ走り出した。



「アンタ 背広は持ってきたわね 

帰ったらすぐに着替えてプラザホテルのラウンジに行きなさい

約束は2時だから あんまり時間はないわよ」



はぁ~? 今なんて言った? 

自分の耳を疑った。



「母さん 何の話だよ まさか見合いじゃないよね 俺 聞いてないよ 

事前に知らせるって約束だったじゃないか!」


「だから いま言ってるでしょう 扶美子おばさんの紹介だからね 

時間に遅れないでよ」


「母さん それないよ! 約束が違うじゃないか!」



怒りで運転に集中できない。



「高ちゃん ほら 信号が黄色よ 注意 注意」



クソーッ お袋のヤツ とぼけた顔をしてなにが注意 注意だよ。



「簡単に彼女の経歴を話すわね 写真はこれよ ほら 結構美人でしょう?」



そういって 運転している俺の目の前に写真を差し出す。



「危ないじゃないか!」



お袋が勝手に見合い相手の経歴を話し出した。



「名前はね 杉村和音さん 大学を卒業後・・・・」 




勝手に言ってろ! 

絶対行かないからな

なんで いきなり見合いなんだよ

あームカツク


でも、扶美子おばさんの紹介って言ってたよな

大学時代 散々世話になったな・・・

くそっ 断れないシチュエーションじゃないかー





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