やわらかな夜
ああ、この呼び方だ。

何だか知らないが、俺はホッとした気持ちになった。

「きてくれたのね」

あかりが俺の隣に腰を下ろした。

「こいと言ったのはお前だろ。

わざわざメモを渡さなくても、素直にきて欲しいと言えばいいのに」

そう言った俺に、
「でも店の場所わかるの?」

あかりが聞き返してきた。

確かに、言われて見れば…。

口を閉じた俺に、
「今日はゆっくりしてね」

席を立ったあかりはどこかへと消えて行った。

「お待たせしました、ごゆっくりどうぞ」

マティーニがテーブルのうえに置かれた。
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