やわらかな夜
「シュージに一途なところもあったってこと、忘れてた…」

呟くように言った後、あかりは伏せていた目をあげた。

「あたしね、招待状の差出人にお金を出されて別れられたの」

あかりが言った。

「つきあってると思ってたのはあたしだけで、差出人はそんなの微塵にも思ってなかった。

“結婚することになったから別れてくれ”。

ある日突然、そんなことを言われた。

別れたくないって言ってダダをこねたら、大金を渡された。

“これをやるから別れてくれ”、って」

そう言った後、あかりはやれやれと言うように息を吐いた。
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