結婚白書Ⅱ 【恋する理由】


会社について 車から降りようとしたが 座るときと一緒 足に力が入らない

なかなかシートから立ち上がれなかった



「ちょっと待って」



そう言うと 彼は助手席のドアを開け 手をさしのべてきた


えっ その手につかまれっていうの?


ドギマギしている自分にビックリした 

手を出そうかどうしようか あたふたしている



「ほら 照れないでつかまってくださいよ」



思いっきり両手をつままれて あっという間に車外に引っ張り出された



「ありがとう・・・」



まだドキドキしてる 私って純情かも・・・



「帰るときは連絡してください 送っていきますから」



”えーっ いいわよ 帰りは何とかするから” そう言ったが 



「必ず連絡してくださいよ 一人で帰ったら承知しませんから!」



逆に脅されてしまった




工藤君の送迎は 二週間続いた


一日も遅れることなく 毎朝同じ時刻に 車の音がした

彼を出迎える母とも いつしか言葉を交わすようになり 

思ったほど無口ではない彼が 母のお気に入りになるのに 

さほど時間はかからなかった



「工藤さんって 見た目からいまどきの青年かと思ったら礼儀正しいし 

なかなか真面目ね

円華 彼ならお付き合いするの お母さん反対しないわよ」



母が とんでもないことを口にした



「変なこと言い出さないでよ 彼 会社でも人気があるのよ 

きっと彼女もいるわよ」



”そうなの?” と 母は あきらめの悪い顔をしていた




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