結婚白書Ⅱ 【恋する理由】


工藤君は なかなか引き下がらなかった

押し問答の末 明日迎えに来てもらうことになってしまった


母が 何事? という顔をしてこっちを見ている

仕方なく ケガをしたいきさつを話した



「まぁ~ 責任感の強い方ね その方 歳はいくつ? 独身? どんな方?」



母の興味はそこにあるのか

結婚しない娘を持つと 親も必死だ



「残念でした 彼 独身だけどまだ20代よ 私なんて対象外です」



いかにも残念そうな母の顔は ”そうなの”と言ったっきり 

その話題は終わった





翌朝 約束通り現れた彼を見て 母は素直に嬉しそうな顔をした



「まぁまぁ ありがとうございます 娘から話は聞きました 

責任を感じてくださったのね 本当に申し訳ないわ

でも 助かります お言葉に甘えてお願いしますね」



母は 私が言うべきことを すべて彼に言ってしまった

そんな母に 工藤君は黙って頭を下げ 助手席のドアを開けてくれた


スポーツカータイプのシートは 座ってしまえばとても楽

だけど 座るときが大変 足に力が入らない今は尚更だ

ようやくシートに身を沈めた




会社までの20分間

黙っているのもイヤだったから 彼に いろいろ質問した

彼はどんな質問にも答えてくれた


仕事のこと

工場の人との付き合いのこと

玲子先生に ウチの会社を紹介されたこと

そして 介護が必要な父親がいることも聞いた


いい加減なヤツだと思っていたけど 結構真面目に生きている

そんな感じがした


ちょっと見直したかも・・・





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