結婚白書Ⅱ 【恋する理由】



今日は仕事にならない

何をしても 昨日のことが思い出される


彼の言葉も ダイアローグできるくらい

何度も 何度も 頭の中で繰り返している


そして 目の前にちらつく 彼の手や顔 

それと・・・唇の・・・感触


あーダメダメ 集中出来ない!


気分転換に医務室に顔を出した




「あら まどちゃん 昨日はご馳走さま 

あんなに楽しいお酒は久しぶりだったわ また 工藤君を誘っていこうね」


玲子先生も満足してくれたみたいだ 良かった



「ところで・・・私と別れた後 彼と手をつないで帰ったでしょう 見てたわよ

まどちゃん まさか工藤君を襲わなかったでしょうね」



玲子先生が 茶目っ気たっぷりの顔で聞いてきた



「襲われたのはこっちよ・・・」



えーっ! と一歩下がって驚いている

そりゃそうでしょう 私だって驚いたんだから



「襲われたって まさか・・・寝たの?」



ちょっと どうしてそうなるの

医者のクセに この人はこういう くだけたところがある



「まさか 唇を奪われただけ だけど彼 真剣だったのよね 

どうしたらいいのよ 私 彼の顔をまともに見られないわよ!」



”まどちゃん ここに座って ちょっと待っててね” そう言って

医務室の入り口のドアに 「ただいま不在」の札を下げた



「これで大丈夫 まどちゃん 落ち着いて ゆっくり話してよ 

アナタたち いつから付き合ってたの ねぇ」



落ち着いて欲しいのは玲子先生の方よ

興奮してるじゃない

そりゃそうよね 

8歳も年下の男に言い寄られたんだから 話を聞きたいわよね


昨日のいきさつを話した

そして 私の思いと戸惑いも・・・



うん うん と頷きながら聞いていた玲子先生が 一つの結論を下した



「工藤君 間違いなくアナタに惚れてるわね」


「本当にそう思う?」


「思う 思う それしか考えられないじゃないの」



惚れてるって・・・本当に?

あのキスは本物だったのよね それは言える・・・

また 彼の顔が浮かんできた


もぉーなんで浮かぶのよ!





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