結婚白書Ⅱ 【恋する理由】


今すぐにでも会って謝りたかった

そして 私の気持ちを聞いて欲しかった


彼の携帯にメールした



『さっきはごめん これから会えないかな  円華』



程なく彼から返事が届いた

ごく短い文章



『夜は出かけられないんだ 明日 会社で』



そうだった お父さんの介護

わかってたのに

聞いたばかりだったのに

自分の事ばっかり考えて 思いを押しつけて・・・


今更ながら 自分の身勝手な行動が情けなくなって 涙が出てきた

泣き声を家族に聞かれないように 枕に顔を埋めた



30分程泣き続けただろうか

メールの着信音がした

工藤君からだった



『来週の日曜 また一緒に行ってよ おにぎりもよろしく!』







それから 毎週のように 彼の海釣りに付き合った



「車を二台持ってるの?」



休日は四駆のRVに乗ってくる



「これは親父の車 たまには乗ってやらないとね

親父 今は運転は無理だけど いつか元気になって

また車を運転できる日が来るんじゃないかと思って 処分できないんだ」


「工藤君って優しいね」


「今頃気がついたの?」



そう言うと 私の頭をぐっと引き寄せて腕に抱え込んだ



「ちょっと 痛いじゃないの!」


「スキンシップだよ スキンシップ」




彼は何気なく私に触れる

歩きながら いつのまにか手を繋いでくる

”こっちへ来て” と言う替わりに 私の腰を引き寄せる

それは 話をするのと同じくらい 当たり前になっていた



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