結婚白書Ⅱ 【恋する理由】


「いつもアナタにばっかりお金を出させてるわね」


「女の子に払わせるのは 俺の流儀に反するんだ」



流儀って・・・気取ってる

女の子って・・・やだ もうそんな歳じゃないのに



「それとも なにかお礼でもしてくれるの? じゃあ ここにしてよ」



唇に指を立てて ニヤリと笑っている

ここって アナタ そこにお礼って・・・

彼の顔を凝視できなくて 目が泳いでしまう



「ほら お礼 待ってるんですけど」



ホント こんなところが強引なのよね

うーん・・・ここは海の上 誰も見てないし 

お礼よ 受け取りなさい!

じっと私を待つ彼に 顔を寄せた



潮風のせいか それとも さっき食べたおにぎりのせいなのか

彼の唇は 少し しょっぱかった






その後 お礼のキスを何度させられたことか

気がつくと彼のペースに乗せられていた



「円華さんのキス 最近上手くなったじゃない 何事も経験だね 

回数を重ねることだよ」



ちょっと 回数って・・・自分から誘っておいて よく言うわよ



「何言ってるのよ 経験なら私だって負けないわ 

だてにアナタより年をとってませんから」



”ふ~ん” と鼻先で彼が笑う

まったく小憎たらしい顔をするんだから




でも 彼のキスって好きだ

言葉や態度はぶっきらぼうなのに

唇を合わせると 慈しむように応えてくれる

そして ギュッと私を抱きしめる


彼は 私といると ほっとすると言う

私は 彼といると心が解放された


一緒にいるだけで良かった

お互い そのとき必要な相手だったから




雨にあい 着替える口実にホテルに入った

そして 求められるまま 彼を受け入れた


それは 私にとって とても自然なことだった



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