結婚白書Ⅱ 【恋する理由】
充たされて・・・ そして


私と彼の休日は 夜明け前に始まる

夜明け前の海にボートをだし 釣り糸を垂れる

日が高くなる前に海を引き上げ シャワーを浴びにホテルへ

そして 当然のように肌を重ね その後 彼は私の胸で熟睡する


毎晩 お父さんの入浴や歩行の介助

いくら若い彼でも 相当な疲労だろう

ホテルで寝入ってしまった彼に はじめは驚いたが

そのまま 寝かせようと思った



「いま何時?」



目を覚ますと 必ずそう聞いてくる



「えーっと 4時 よく寝てたわね」



うーん と大きな伸びをして いつも同じことを言う



「ありがとう スッキリしたよ」



”円華の胸だと ホントよく眠れるんだ いっそのことウチに来てよ”

本気とも冗談ともとれることを口にする


私のことも いつのまにか”円華”になった


”年下のクセに呼び捨てにするなんて!”

うつぶせの体を起こして抗議したけれど・・・ 



「ほら こっちを向かないで 

こんなことしながら”円華さん”なんてムードないね」



私の背中に唇を這わせながら とぼけたことを言う

アナタの口からムードなんて言葉が出るなんて 笑えるわ



円華の肌って綺麗だよな

円華の指が好きなんだ

円華と一緒だと よく眠れるよ



”円華”と呼ばれるたびに 私も充たされる



「憎らしいことを言う 要の口が好きよ」



そっと唇を寄せると 彼は満足げに受け取ってくれた

いつしか私も 要と呼ぶようになっていた 




< 24 / 42 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop