奴隷戦士
「話はまだ終わってねえぞ、紐紫朗」
話ができる準備ができたら俺の部屋に来い。
師匠はそう言い、踵を返した。
何の話だろう。
「だってっさ、紐紫朗。いーなー!俺のほうが早く始めたのに何でもう抜かされるかなー…」
ははは、と笑い、ぼくより一つ上の仲間の言葉で一気に現実に引き戻される。
「見てたら分かるだろ、そんなもの。基礎を一通り教えて、ちょこっと筋肉つけて、一か月であんな上達しねえってフツー」
「あー、まれに見る天才ってやつか」
「そう、それそれー」
「ま、天才も努力しねえと落ちぶれるのは早いぜ」
年長の彼も言った。
「そういや、おめえはもう師匠の苗字、使ってんだよな?使うとき、あんのか?」
一度だけ、と年長の彼はうなずいた。
「どんなだった!!?」
「どんなって…ゴロツキに絡まれたとき、名前聞かれたから言ったら逃げた」
キラキラしていた周りの視線が一気に訝しい視線に変わった。
「…………………それほんとかあ?」
「俺らそんなすげえ剣教わってんの?」
「なんでも、この国で三つの指に入るくらい有名な流派らしいよ」
「へー…」
「っていう話がしたいんじゃねえの、師匠は」
「あぁ、円谷を名乗る心意気ってやつ?」
「たぶんね」
「ま、紫朗ならあんまり必要としないことかもしれねえけどな」
「なんで?」
「同い年のどこぞの誰かさんと違って、言いふらしたり権力に身を任したりしねえだろ。年のわりに落ち着いてるしな」
「あぁん?なんで俺を見んだよ」
「目が合っただけだろ。自覚してんのか?」
「やめなよ、二人とも。わざわざ傷つけるようなこと言わなくても」
「…いや、紫朗は落ち着ているっていうか、」
「ジジくせえよな…」
1人が言った言葉を誰かが紡いだ。
「じっ!!?」
驚きすぎて言葉が出ないとは、まさにこのことだと身をもって知るとは思わなかった。