奴隷戦士


着替えて、花ちゃんに師匠のところまで案内をしてもらった。


「ありがとう」


障子の前で、深呼吸をする。


「失礼します」


サッと開けて入ると、師匠の大きな手がぼくの頭に乗った。


「お前は天才だ」


わしわしと頭をなでる彼は嬉しそうだった。


「座れ。これから話すことはとても大事なことだ」


ぼくは師匠に促されて座布団に座った。


花ちゃんは部屋に入らず、もと来た道を帰っていった。


師匠は四つのことを話した。


一つ目は円谷の流派のこと、二つ目は円谷が三大流派と呼ばれている理由、三つ目は苗字を持つということ、最後に花ちゃんのこと。


簡単にいうと、円谷流は護る剣。


後ろにいる大切な人を守るために生まれた流派であることから、自分が立っているところからあまり動かない。


また、自分が生きていなければ護れないため、防御が多い流派だともいえる。


つまり、一定距離を離れたら元の位置に戻るわけなので、実際に戦えば長引くため、相手が体力切れになるか、自分が体力切れになるかの持久戦でもあること。


次に三大流派について。


円谷流は護る剣、淡路(アワジ)流の殺す剣、その二つを折衷した海淵寺(カイエンジ)流があると師匠は言った。


殺す剣の淡路流は円谷流の派生で、複数を一度に相手し、確実に息の根を止める流派。


でも今はもう廃れてしまっているらしい。


だから、この流派はもう学べないし、これからは学ぶ必要もない、と。


折衷した海淵寺流はぼくがいる海淵寺の初代が作り上げたもの。


ちなみに鷹介は25代目。


海淵寺流の人たちは、今は海淵寺にはおらず、どこか遠くにいるらしい。


円谷が三大流派と呼ばれているのは、円谷が剣の始まりだからだ。


円谷流をもとに淡路流が生まれ、その折衷が海淵寺流。


今はこの三つが基本の流派であり、そこからまた派生してたくさんの流派ができているからだそうだ。


三つ目、苗字を持つこととはいったい何だろうかと師匠に問われて、ぼくは何も言えなかった。


というより、分からなかった。


単に所属しているということだけではなく、一人前になったということも意味しているのだと彼は言った。


だから、傲慢にふるまえば、円谷は傲慢な人の集まりだとも言われるようになるのだと。


また、戦い方を見て人は臆病な流派だと馬鹿にするかもしれない。


その時は言わせておけばいい。


無知な人間ほどよくしゃべる。と彼は言った。
< 26 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop