奴隷戦士
「最後に、花のことだが…」
師匠が今まで真剣な顔をしていたのに、急に花ちゃんのことを言いだして、急にニヤニヤしはじめる。
「…入っておいで、花。そこにいるんだろう」
師匠の言葉でスッと障子が開いた。
まさか、本当に花ちゃんがいるとは思っていなかったぼくは吃驚する。
「俺は円谷道場を紐紫朗に継いでほしいと思っている」
その言葉にぼくはさらに吃驚する。
ぼくがこの道場を?
「この言葉の意味が分かるか?」
となりにいる花ちゃんはうつむいて顔を真っ赤にしており、師匠はぼくを試すような眼で見ていた。
「ぼくと花ちゃんが師匠とお雪さんみたいに夫婦になる…ってことです、か」
声がかすれた。
「分かっているのならいい。まぁ、ずいぶんと先の話だが頼む」
そう言って師匠は俺に頭を下げた。
「…………………」
いや、ぼくはいいけど。
「花は?それでいいの?」
花を見ると彼女は恥ずかしそうに言った。
「花火のときに紐紫朗ならいいって言ったでしょ!!!」
と、バタバタと出て行ってしまった。
「っ!!!」
そのあと師匠が何か言っていたけれど、ぼくがふにゃふにゃして答えられるような状況じゃなかった。
それは寺に帰っても一緒で、鷹介が気持ち悪いと何度も言っても、ぼくは浮かれていた。
わけを話すと鷹介は深くため息をつき、額に手を当てた。
「これが煩悩ってやつか…なんと厄介な…」
なんて彼の言葉も気にも留めないくらい、それはもうあまりの衝撃で、ぼくは数日頬が緩みっぱなしになった。