奴隷戦士
そして、北風が吹き、雪が降り、季節は冬になった。
「今日も寒いね」
しんしんと雪が降るなか、手をすり合わせて、はーっと息を手に吹きかけながら花ちゃんは言った。
「きっと仏さまもそう思っているんじゃないかな、こんなに雪を降らすんだからさ」
ぼくがそう言うと彼女は一瞬、キョトンとして、ふふ、と笑った。
「なにかおかしいこと言った?」
「ふふふ、いくらここにいてもあなたの家はあのお寺だものね」
彼女は真っ赤にさせた鼻をぼくに向けて笑った。
ぼくが「仏さま」なんて僧の言うことを言ったりしたから、彼女は笑ったのだろうか。
「まぁ…小さいときから言われてたしね」
はは、と空笑いをすると彼女はポツリと言った。
「私は仏さまなんて信じない」
呟くように彼女の声は低く、悲しげだった。
「何も行動せずにただ祈るだけなんて嫌。幽霊を信じて、それを見ようと一晩中起きているようなものじゃん…ばからしい」
「…花?」
地雷を踏んだのだろうか。
彼女は座って膝を曲げて、顔を自分の膝に埋めて上げようとしない。
そしてぼくが勇気を振り絞って、彼女の名を呼び捨てにしたことにも気づいていないようだった。
「ねぇ、気づいているんだよ」
不意に彼女が顔を上げ、真剣なまなざしでぼくを見た。
「気づいているって…なにに?」
特に隠し事をしているわけでもないので、思い当たる節がない。
ぼくは彼女の言葉を待った。
「打撲」
「え?」
ピッとぼくの背中を指して彼女は言った。
「それからオデコ、わき腹、スネ、顔」
花ちゃんは淡々と言うが、ぼくにはなぜその部位を言っているのかはさっぱり分からなかった。
「怪我なら大したことないよ」
はははと笑ってみるものの、彼女の顔は一向に晴れない。
「剣をしている時じゃなくて、ここに来る前の…」
「ここに来る前?…え、もしかして花ちゃん、ぼくが道場に来るまでにコケて大けが毎回してると思ってる?」
「もう、ふざけるのもいい加減にしてよ!」
ぴしゃりと、怒られた。