奴隷戦士
「こいつらで最後か?」
「いや、東の寺にまだいるはずだ。殺すなよ、もったいない」
「ハッ、わかってら」
男たちが話をする声は、なぜか気持ち悪かった。
何の話が分からないけど、東の寺って、海淵寺のこと?
殺すって、鷹介の弟たちに、なにをする気?
ぼくは相手から目をそらさずに鞘を抜き、蓮の刀身をあらわにする。
火がもう近くまで来てしまったのだろうか。
こめかみから、汗が流れていく。
「おい、こいつ俺らと殺り合おうってよ」
「笑えるな、兄弟」
ひゃひゃひゃひゃと、まるで人間ではないような笑い方だった。
カチャリと、ぼくに銃口を向けられ、蓮を握る力が入った。
背中の後ろにいる花ちゃんが、小さくぼくを呼んだ。
まるで心配するようだった。
「ぼくが動くのと同時に伏せて」
本当は名前を呼びたかったけど、そんな悠長なことも言ってられない。
分かった、と小さな声が聞こえたのを確認して、ぼくはここで死ぬ覚悟を決めた。
ぼくは花ちゃんの旦那さんになって師匠のあとを継ぎたかった。
花ちゃんとずっと一緒にいたかった。
「残念だったな、ボウズ。剣と銃じゃ、お前のほうが分が悪い」
確かに、円谷流は飛び道具に敵わない。
せっかく師匠から苗字をもらったのに、意味がない。
ギュッと、蓮を握る手に力を込める。
男の手に力が入る瞬間、ぼくは足に力を入れ、一気に間合いを詰めた。