奴隷戦士


「こいつらで最後か?」


「いや、東の寺にまだいるはずだ。殺すなよ、もったいない」


「ハッ、わかってら」


男たちが話をする声は、なぜか気持ち悪かった。


何の話が分からないけど、東の寺って、海淵寺のこと?


殺すって、鷹介の弟たちに、なにをする気?


ぼくは相手から目をそらさずに鞘を抜き、蓮の刀身をあらわにする。


火がもう近くまで来てしまったのだろうか。


こめかみから、汗が流れていく。


「おい、こいつ俺らと殺り合おうってよ」


「笑えるな、兄弟」


ひゃひゃひゃひゃと、まるで人間ではないような笑い方だった。


カチャリと、ぼくに銃口を向けられ、蓮を握る力が入った。


背中の後ろにいる花ちゃんが、小さくぼくを呼んだ。


まるで心配するようだった。


「ぼくが動くのと同時に伏せて」


本当は名前を呼びたかったけど、そんな悠長なことも言ってられない。


分かった、と小さな声が聞こえたのを確認して、ぼくはここで死ぬ覚悟を決めた。


ぼくは花ちゃんの旦那さんになって師匠のあとを継ぎたかった。


花ちゃんとずっと一緒にいたかった。


「残念だったな、ボウズ。剣と銃じゃ、お前のほうが分が悪い」


確かに、円谷流は飛び道具に敵わない。


せっかく師匠から苗字をもらったのに、意味がない。


ギュッと、蓮を握る手に力を込める。


男の手に力が入る瞬間、ぼくは足に力を入れ、一気に間合いを詰めた。
< 35 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop