ビロードの口づけ 獣の森編
やはり従うふりをしているのだろうか。
意味ありげな笑みを浮かべるザキにクルミは困惑する。
クルミの不安を察したのか、ザキがクスリと笑った。
「誤解するな。オレはあいつの足元をすくってやろうと考えているわけじゃない。あいつが王でいる限り、協力は惜しまないし命令にも従う。ライも同じだろう」
クルミがホッと息をついた時、ザキの笑みは一変して凶悪な色を湛えた。
「だが、あいつがただの黒スケに戻るなら話は別だ。失望したなら遠慮なく牙を剥いていいと言ったのは他ならぬあいつ自身だからな。その時はあいつの原動力になっているおまえを真っ先に食ってやるから覚悟しておけ」
ザキの全身からみなぎる殺気に気圧されて、クルミは両腕で自分自身を抱きしめながら一歩退く。
それを見てザキが豪快に笑った。
「今すぐ食うわけじゃない。そんなに怯えるな。食われたくなかったらせいぜいあいつを支えてやる事だな」
「はい。そうします」