ビロードの口づけ 獣の森編


 クルミが無理矢理笑顔を作って頷くと、ザキはフンと鼻を鳴らした。


「話はそれだけか?」
「はい」
「じゃあな」


 背を向けて行こうとするザキに、クルミは慌てて声をかけた。


「あ、あの」


 ザキが立ち止まって振り向く。
 クルミは今度こそ心からの笑顔で告げた。


「ミユと末永くお幸せに」
「あ、あぁ」


 少し照れくさそうに鼻の頭をかいてザキは目を逸らす。
 そしてそのまま城を出て行った。

 ついさっきは凶悪な殺気をみなぎらせていた大きなザキが、ミユの事には照れている様子がなんだかかわいい。
 クルミは密かに目を細めた。

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