ビロードの口づけ 獣の森編


 次第にのどが鳴り始め、肩に乗せた前足が足踏みをする。
 どうやら機嫌は直ったらしい。

 目を閉じてクスクス笑いながら、しばらくそうしていると、突然耳たぶを甘噛みされた。
 牙ではない感触に目を開く。

 抱きしめる手の平には人肌のしっとりした温もり。
 目の前にはジンがいた。


「オレをからかうとは、今夜覚悟しろよ」
「え……」


 昨日のお返しなのに。
 そう反論する前に唇を塞がれた。
 深く絡まる舌に翻弄されて、反論もかき消えていく。
 やはりジンを困らせると反撃に遭うようだ。

 少ししてジンは唇を離し身体を起こした。
 クルミも身体を起こす。
 ジンはクルミの肩を抱き寄せ額に口づけた。

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