ビロードの口づけ 獣の森編
「せっかくあんたを手に入れたのに夜しか一緒にいられないとは。人社会なら蜜月のはずなのに」
「忙しいんですね」
「結月の間は男の気が荒くなるからな。女を巡って小競り合いも増える」
選択権のない男たちだが、それでも自分好みのいい女を手に入れたいという願望はある。
そのため、いい女には多くの男が集まる。
当然ながら自分を選んでもらうためには、他の男たちは邪魔者だ。
うっかりアピールの場で鉢合わせでもしたらケンカになったりするらしい。
そういう些細ないさかいが大事に発展しないように、ジンは近衛を派遣して森の中を巡回させている。
そのリーダーが、つい先日侯爵邸を襲ったあの怪力の獣だと聞いて、クルミは目をむいた。
「腕力であいつにかなう者はいない。あいつが監視しているだけで充分な抑止力になる」