ビロードの口づけ 獣の森編


 城内には使用人しかいないようだが、獣の男女は一緒に暮らさないと聞いた。
 森のどこかにいるのだろう。

 王の選んだ女だ。
 さぞかし素敵なひとに違いない。
 それを思うと自然に表情が曇る。

 ジンはクスリと笑って、クルミのこめかみに口づけた。


「あんたの他に生活を共にする女はいない。オレは五年前から結月に女を選んだ事はない。あんたを手に入れるために獣王になったんだ。他の女には興味ない」


 どうやって義務とも言える結月を逃れてきたのかわからない。
 けれど五年もの長い間、自分だけを欲してくれた事がたまらなく嬉しい。

 ホッとすると同時に胸が熱くなり、クルミはジンの首に腕を回して抱きついた。

 ジンはクルミの髪を撫でながら、頭の上に何度もキスを落とす。


「もう少しゆっくりしていたいが仕事が待っている。あんたもさっさと支度しないと、またミユに裸を見られるぞ。返事があるまで扉は開けるなと注意しておいたけどな」


 クルミのあごを掴んで唇に軽く口づけた後、ジンはベッドを下りて獣姿に戻った。

 獣姿でも器用に扉を開け閉めする。
 その愛らしい姿を見送りながら、クルミは密かに頬を緩めた。

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